(Q1)コーヒー休憩の際に、虫を呼ぶためだったら匂いだけで良いはずなのになぜキレイな花をつけるのか?
というご質問をいただきました。その時の回答について補足いたします。
(A1)ご質問を「匂いと色と両方を(コストをかけて)するのはなぜか」と分解して考えれば、以下のように
推測することはできます。(どなたか研究しているかもしれませんが論文にあたったわけではありません)
匂い(空気中に漂う化学物質)は、植物本体から離れて、拡散していきます。
なので、かなり遠くまで届くうえその植物が何かの物陰にあっても、虫たちに届くことが期待できます。
これは、匂いが花の色よりも有利な点です。
一方で、花の色はその植物の本体、もっと言えば虫に訪れてほしい花粉のある場所から離れることなく
ピンポイントで花粉の位置を示すことができます。
匂いでも近くに来てもらうことはできますがピンポイントで確実に、となると色(視覚)もあった方が
より花粉を運んでもらいやすくなるのかもしれません。
(Q2)植物の寿命に関して
(A2)ご質問は、例えば大きな木が倒れた後、脇から芽が出てくることがある。これをもって寿命が永遠だと言える
のか、というご主旨だったと思います。
植物にはたしかに、植物体のごく一部から、丸ごとの植物体を再生する能力があります。少し正確にいうと、細胞
が丸ごとを再生できる能力を保持しているのです。(わたしたち哺乳類の細胞は、受精卵から少したったあたりで、
この能力を失います)
ただ、この能力は、普段は寝た状態になっています。葉っぱや枝からいきなり根が出たりは、普通はしません。
逆にいうと、必要になれば、その能力を発揮できるということになります。
もとの質問に戻りますと、本体が倒れた後に脇から出てきたひこばえはこれに相当します。「不定芽が伸びた」
などと言います。この不定芽から、もう一度、全体を作り直すことは可能です。
そういう意味では、寿命がないともいえるかもしれません。ただ、もとのサイズになるには、時間がかかりますし、
本体が老齢の高木だったとしても、若い植物体としてやり直すことになります。
(本体の蓄えた栄養を使えるので、少し成長は早いかも知れません)
脇から伸びてきたひこばえを「本体と同じ個体」とみなせば寿命はないと言えますし、「無性生殖による子の世代」
とみなすこともできるかも知れません。
ハカラメ(葉から芽、セイロンベンケイソウ)という面白い植物があります。丸ごと再生する力を「普段も」発揮して、
葉の縁から根や若葉が出てきます。http://www2.tokai.or.jp/seed/seed/seibutsu15.htm
これを見ていると「無性生殖による子の世代」という印象になりますが、現象としては、ひこばえと同じです。
(不定芽が伸びている)